ミスディレクション映画の難しさを痛感する「目撃者 彼女が見たもの」
映画「目撃者 彼女が見たもの」は惜しいミスディレクションムービーだと思う。
「目撃者 彼女が見たもの」は2017年制作のカナダ映画。
(テレビ用映画らしい)
原題は”Eyewitness”(目撃者)。
上映時間は87分。
この映画「目撃者 彼女が見たもの」はいわゆるミスディレクションムービーだ。
(ミスディレクションとは、注意を意図していない別の所に向かせる現象やテクニックのこと。 主にマジックで用いられ、観客の注意を別の場所にそらす手法として知られる。右手に注目している間に左手で何か種になる動作を行う、などとして使用される。 ウィキペディア)
この映画「目撃者 彼女が見たもの」をネタバレありでご紹介する。
映画「目撃者 彼女が見たもの」の監督はアンドリュー・C・エリン。
ホラー映画「ヘイヴンハースト」(2016)、「インモラル・ヴァンパイア 淫夢の中だけ」(2013)などの作品があるが日本ではほとんど無名の監督。
主演は比較的評価の高いホラー映画「クライモリ」(2003)のリンディ・ブース。
ホラー映画「クライモリ」とは?
映画「クライモリ」(原題はWrong Turn)は、2003年のアメリカ・ドイツ合作のホラー映画。
森に迷い込んだ若者たちが忌まわしい姿の者たちに襲われるパニック・ホラー。
スティーヴン・キングが「Book」誌で年間ベストワン映画に挙げて絶賛し、話題となった作品。
「目撃者 彼女が見たもの」に話を戻そう。
「目撃者 彼女が見たもの」のあらすじ
富豪の娘ダイアナは、5年前に自宅ガレージで起きた実業家の父親と婚約者ブライアンを殺された事件の悲しみから今だに立ち直れずにいた。
父の事業を引き継ぐべきところを休職したままにいる。
弟クリスとその妻、そして弁護士マーティンは今後の人生のためにも、ダイアナに殺人事件の舞台となった豪邸売却を促すが、ダイアナは思い出の詰まった家を離れる気にもならず、一人孤独に暮らしていた。そんな中、殺害犯で服役中だったはずの庭師のルイスが脱獄する。
警察や弟のクリスとその妻、ダイアナに好意を寄せる亡き父の顧問弁護士マーティンらはルイスがダイアナに復讐するために、この豪邸に来るのではないかと心配する。それは、無実を主張するルイスの有罪判決を決定づけたのはダイアナの目撃証言だったからだった。
周囲の予想の通り、脱獄半ルイスはダイアナの住む豪邸に忍び込み、ダイアナを拘束する。しかし、ルイスの狙いは”真犯人探し”だった…
ほぼ屋敷の敷地内で展開するこの映画。
出演する役者の数も多くない。
映画は予算や人員だけじゃないということを証明したかったのかもしれない。
”アイディアだけで引っ張ってゆく”という考えは面白いのに残念な仕上がりになってしまった。
犯人捜しのミスディレクション
脱獄してきたルイスは顧問弁護士のマーティンを真犯人と疑うが、その根拠が希薄で共感できない。
(案の定、マーティンは犯人ではない)
観客の多くは前半で”犯人”を見抜くに違いない。この辺りは伏線の見事さというより、脚本にひねりが足りないというべきだろう。
(ここは、これから見る方のためにあえて伏せる)
次第に”犯人はルイスではないのでは?と考えるようになるダイアナの感情の動きも安易すぎるし、演技的にも今ひとつ。
リンディ・ブースは富豪の娘ダイアナ役で線の細い傷ついた女性は見た目はピッタリだけど…
(もう少し、芝居の上手な女優が演じると違ったかも)
脱獄囚ルイスも凄みや必死さが足りない。
(クレイグ・オレジニクという名前の役者)
クライマックスの犯人との対峙のシーンも迫力に欠ける。
(ここは見せ場!うーん演出とカメラ割りにも問題あり)
少しづつ、ボタンの掛け違いがあるような感じ映画「目撃者 彼女が見たもの」。
実に惜しい。
「映画『ダウンレンジ』は映画鑑賞の本来の目的を考えさせる映画 [映画鑑賞]
今日、ご紹介するのは映画「ダウンレンジ」です。
映画「ダウンレンジ」は人気のない道路で立ち往生した6人の大学生の男女が、突如、出現したスナイパーに襲われるアクション・スリラー。
”映画はワクワク、ドキドキでなければならない”と考える筆者にとっては、色々考えさせられる映画でした。
映画「ダウンレンジ」は北村龍平監督のアメリカ映画。
タイトルの「DOWN RANGE」は銃弾の射程距離内、戦闘区域の意味。
映画「ダウンレンジ」は2017年9月10日にトロント国際映画祭で上映されました。
(シッチェス・カタロニア国際ファンタステック映画祭、釜山国際映画祭などでも上映)
日本では9月15日より、新宿武蔵野館で2週間限定ロードショー。
(その後、大阪第七藝術劇場で公開)
上映時間は90分。
R15+指定。
(グロい描写も多い)
監督の北村龍平は2001年インディーズ映画「VERSUS -ヴァーサス-」でローマ国際ファンタスティック映画祭監督賞、大沢たかおと加藤雅也主演、堤幸彦と競作した2003年中編剣術アクション映画「荒神」でブリュッセル国際ファンタスティック映画祭監督賞、2003年小山ゆうの漫画を映画化した映画「あずみ」でフィラデルフィア国際映画祭観客賞を受賞しているアクションには定評のある監督。
一方、こちらも原作ありき、2003年映画「スカイハイ 劇場版」、2004年東宝映画「ゴジラ FINAL WARS」、まさかの実写(実は1974年「ルパン三世念力珍作戦」に続く2作目)2014年「ルパン三世」など評価が分かれる作品も多い。
映画「ダウンレンジ」の主演を務める6人の大学生は全員無名。
1万人を超えるオーディションから選ばれました。
(この中からスターが現れる可能性も否定できないですぞ。わりと早く画面からいなくなるジェフ役ジェイソン・トピアス。そのほかでは、ケレン役ステファニー・ピアソンは注目)
映画「ダウンレンジ」のあらすじ
昼間、太陽が照りつける中、人気のない幹線道路を走るSUV車。
相乗りをしている大学生の6人の男女。
いきなり、左の後ろのタイヤがバーストする。
大学生達がタイヤを交換し始めると、突如ライフルの”音なき銃弾”が彼らを襲う。
恐怖に怯え、SUVを楯に隠れる大学生達。
車はほとんど通らず、携帯電話も繋がらない。
”姿なきスナイパー”は大学生達をまた一人、また一人と血祭りに上げてゆく…。
無人の荒野をバックに展開する、いわゆるワンシチュエーション・スリラー映画「ダウンレンジ」。
ワクワクするポイントがある映画は面白い。
アメリカ資本ながら、インディペンデント映画。
北村龍平の”原点回帰映画”と言ってもいい。
(ワクワクポイント)
“映画はワクワク、ドキドキでなければならない”
”終わりなき絶望。”というキャッチ・コピーと想像を掻き立てるポスター。
(ワクワクポイント)
6人の大学生男女VS姿なきスナイパーという事前情報。
(ワクワクポイント)
視聴前から3ワクワクポイント。
悪くありません。
ここからネタバレあり。
開始早々、SUV車がパンク。
(ワクワク)
タイヤ交換のシーンが長い。
(出演者の相関関係を見せるつもりだろうが、あまり説明はない。ただ、ダラダラ。演出もイマイチ。実にもったいない)
6人の若い無名のアクターが主役。
(誰が生き残るかわからない。ドキドキポイントです。しかし、感情移入しずらい。このへんは諸刃の剣)
突然の膠着状態。
(少し、ダレる。もう少し、頑張りましょう)
後半、家族3人を乗せた車が通りかかるあたりから俄然、映画は息を吹き返す。
(ワクワク、ドキドキ)
そして、主役だと思っていた女の子の突然の死。
(やるじゃん、北村龍平。予想を裏切られた。北村龍平は今回も脚本に参加)
駆けつけた警官たちとスナイパーとの夜の死闘。
(ここは大好き。ワクワク、ドキドキMAX)
いやー、驚愕のラスト5分はなかなかの出来。
(ここはタネ明かしなし。映画「ダウンレンジ」を御覧下さい)
ネットでは評価の分かれるこの映画「ダウンレンジ」。
筆者は後5分短ければ、傑作だと思います。
”姿なきスナイパー”の目的は最後まで明かされません。
(顔も年齢もハッキリとしない)
色々な意味で、この映画「ダウンレンジ」はスティーヴン・スピルバーグ監督の「激突」(1971年)を彷彿させると言われていますが、残酷描写も含めると筆者にはロバート・ハーモン監督の「ヒッチャー」(1986年)の方が近いと思う。
何はともあれ、この映画「ダウンレンジ」はスリラー映画好きなら、一見の価値あり。
(ワクワクポイント、ドキドキポイントある映画はいい映画だから)
映画「search/サーチ」はなかなかの拾い物。 [映画鑑賞]
アイディアが秀逸な映画「search/サーチ」(原題:Searching)は、2018年に公開されたアメリカ合衆国のスリラー映画。
今回はネタバレなしでご紹介したい。
映画「search/サーチ」の上映時間は102分。
監督はアニーシュ・チャガンティ。
アニーシュ・チャガンディはインド・ハイデラバード出身。
アニーシュ・チャガンディの経歴もユニーク。
南カリフォルニア大学で映画製作を学び、23歳の時、グーグルグラスのみを使用して撮影した2分半の短編映画「Google Glass: Seeds(原題)」(14)をYouTubeに投稿すると、24時間のうちに100万回以上の再生回数を獲得。その直後、ニューヨークのグーグル・クリエイティブ・ラボに招かれ、2年間グーグルのCM制作などに携わった。
映画「search/サーチ」はアニーシュ・チャガンティの劇場映画監督デビュー作。
同作はサンダンス映画祭の観客賞を受賞。
サンダンス映画祭とは?
サンダンス映画祭は、アメリカの映画祭。ユタ州のスキーリゾート地で有名なパークシティで、1978年より毎年1月中旬から11日間に渡って開催されている。インディペンデント映画を対象とし、数万人規模の客を招き約200本もの長・短編映画が上映される。日本のNHKがスポンサーに名を連ねている。
(ウィキペディアより)
主演のデイビッドにはジョン・チョー。
(名作SFのリメイク映画「スター・トレック」(2009~)でジョージ・タケイに代わりヒカル・スールーを演じている)
それ以外、出演者に日本で知られている俳優はいないようだ。
デイビッドに手を差し伸べる女性捜査官ヴィック役デブラ・メッシングという女優は筆者は知らなかった。
(単に勉強不足だが)
「search/サーチ」はストーリーの全てがパソコンの画面上で展開されるという異色の映画だ。
でゃ、映画「search/サーチ」あらすじを導入部だけ紹介する。
愛妻を癌で亡くしたディビットは高校生になった一人娘のマーゴットとの関係も日々、微妙なものとなっている。
ある日、マーゴットが勉強会といって外泊をする。
夜中、マーゴットから連絡があったが、デイビッドは就寝中で電話に出ることが出来ない。
翌朝、デイビッドが起きるとマーゴットは家に居る気配はない。
一抹の不安がデイビッドの胸によぎる。
心配になったデイビッドは通っているピアノ教室に連絡を入れ、マーゴットに連絡を取ろうとするが、半年前に辞めているとわかる。
手がかりはマーゴットが家に置いていったノートパソコンだけ。
デビットはマーゴットの居場所を必死に捜すが、一向に連絡は取れない。そして、デイビッドは娘について何も知らないことに気づき、愕然とする。
デイビッドは意を決して警察へ捜索願いを出すが…
この映画「search/サーチ」は情報を入れないで鑑賞をした方がより楽しめます。
いまや、SNSは最も身近なコミュニケーション・ツールと言ってもいい。
Facebook、インスタグラム、YouTube、TikTok,Line
それらを効果的に使って娘を捜す若き父親がいかにも今ドキ。
昨今のニュースで取り上げられている通り、
SNSが諸刃の剣であることは皆がわかっている。
この映画「search/サーチ」は風刺も効いて好感が持てる。
監督のアニーシュ・チャガンディは1991年生まれ。
これからも楽しみな逸材。
(アニーシュ・チャガンディは映画「search/サーチ」の脚本にも携わっている)
この映画、伏線の回収も見事。
驚きのラストも素晴らしい。
映画はアイディア。
編集とカメラワーク、良い役者が揃えば良作は保証されたようなもの。
どうやら、続編もあるらしい映画「search/サーチ」は見て損はない映画。
オススメ。
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結末が読めないサスペンス映画「アイデンティティ」 [映画鑑賞]
先が読めない映画として話題になった洋画「アイデンティティー」(IDENTITY)
は2003年のアメリカ映画。
映画「アイデンティティー」は”ワンロケーション・ミステリー”
(ワンロケーション・ミステリとは、”限られた空間で展開する謎解きや犯人探し”を意味します)
映画「アイデンティティー」の日本公開は10月25日。
上映時間は90分。
監督はジェームズ・マンゴールド。
ジェームズ・マンゴールドは1963年12月16日、ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。
1995年に『君に逢いたくて』で映画監督デビュー。
1999年映画「17歳のカルテ」でアンジェリーナ・ジョリーを世界に押し出した監督。
(映画「17歳のカルテ」は青春映画の佳作。アンジェリーナ・ジョリーの演技がとにかく素晴らしい。未見の方はご覧下さい。主演・制作総指揮はウィノナ・ライダー)
2001年にはロマンテック・コメディ映画「ニューヨークの恋人」で再び注目され、
2005年にはリース・ウィザースプーンにアカデミー主演女優賞をもたらす映画「ウォーク・ザライン/君に続く道」を監督。
2010年トム・クルーズとキャメロン・ディアスの共演が話題になった映画「ナイト&デイ」や2013年公開の映画「ウルヴァリン: SAMURAI」など着実にキャリアを積み重ねている監督
(2017年映画「ウルヴァリン: SAMURAI」の続編「LOGAN/ローガン」は前作を見ていない人にもおすすめヒーローアクション。”ヒーローが未来永劫でないことを教えてくれる”佳作です。筆者は「17歳のカルテ」とともにジェームズ・マンゴールド作品の中では高く評価しています)
主な出演者です。
女優の運転手エド役にジョン・キューザック。
(学校カーストの頂点にいる女の子に恋する普通の高校生を演じた1989年の切ない青春映画「セイ・エニシング」が懐かしい)
囚人を護送中の警官ロード役にレイ・リオッタ。
(2001年映画「ハンニバル」で自分の脳みそを食べる司法省役人役が頭にこびりついて離れない)
モーテルの主人ラリーにジョン・ホークス。
(やっぱり、ジェニファー・ローレンスがボコボコにされる2011年の彼女の出世作「ウィンターズ・ボーン」の不気味なティアドロップ役でしょ)
女優カロラインにレベッカ・デモーネイ。
(1995年の制作総指揮も兼ねたアントニオ・バンデラスとの共演スリラー映画「ストレンジャー」かな)
新婚夫婦の妻ジニーにクレア・デュヴァル。
(映画「17歳のカルテ」にも出てます)
娼婦役でアマンダ・ピート。
2000年の「隣のヒットマン」のセクシーな歯科助手)
では、先が読めない映画「アイデンティティー」のあらすじを途中までご紹介します。
(今回はネタバレなし)
精神科ドクター、マリックは、診察時に録音した患者のテープを聴く。
「君は誰かね。君の名は?」
「好きに呼べばいい」
「君はなぜここに来たんだ?」
「俺の頭痛を治してもらうためだ。アスピリンは役に立たない」「お母さんの話をしてくれ」「おれの母親か? 売春婦だった」
「アパートの住人6人を,98年5月10日に殺したのは君か?」
「俺の誕生日だ」
患者は連続殺人犯。責任能力があると判断され、死刑が確定している。
外は記録的な雨が降り続いている。
モーテルの管理人ラリーのところに、怪我人が運びこまれる。
被害者の名はアリス。
運んできたのは夫のジョージ。
息子のティミーも一緒だ。
彼女をはねたのはエド。かつての人気女優、カロラインの運転手。
モーテルの電話は不通。
エドは病院を目指して車を走らせる。途中、車が故障した娼婦パリスに助けを求められる。彼女が言うには洪水でどこへも行けないと言う。
しばらく走ると、道は冠水しており、行き止まり。
引き返そうとしたとき、新婚夫婦ルーとジニーの車がやって来た。4人はそろってモーテルへと向かった…。
真夜中に鳴り響くベル。
判事は不機嫌そうに、電話をとる。それは、彼にとって意外な知らせだった。
死刑判決を下した事件の再審理が、これから始まるというのだ。
明日、死刑が執行されることになっている囚人は、現在移送中。
弁護側が同席を要求しているらしい。
再審理のきっかけとなったのは、囚人が書いた日記。
この日記は、意図的に隠蔽されていたと弁護側は主張している。
その内容とは一体どんなものなのか?
弁護側には、彼の死刑を中止させるだけの勝算があるのか?
モーテルの最後の客はロード。
囚人を移送中の刑事だ。
慌しく写真を片付け出すルー。
大金を隠すパリス。
そして、ロードのスーツの下のシャツには赤黒いシミが…。
怪しげな動きがある中、洗濯機の中から女優カロラインの頭部が発見された。しかし、これは、始まりに過ぎなかった。ルーと囚人は何者かに殺され、ジョージは事故で死亡。エドがはねたアリスも息を引き取った。死体の傍らには必ずモーテルのカギが、10、9、8…、と死の順番をカウントダウンするかのように置かれていた。この異常事態から逃げるジミーとティミー。しかし、車へと駆け寄った瞬間、爆発し、炎上する。消火後、そこに2人の死体はなかった。それだけではない。いつのまにかすべての死体が消えていた。
残されたのは、エド、パリス、ロード、ラリーの4人。
犯人は生存者の中にいるのか?
(以上のあらすじは映画「アイデンティティー」パンフレットの中から抜粋)
映画「アイデンティティー」はどうしておすすめサスペンスなのか?
豪雨の中、行き場のない10人がモーテルに偶然集う。
降り続く雨の中、薄暗いモーテルで、また一人、また一人と命を奪われていく…。
どうして、なぜ?
脚本を読んだジョン・キューザックも”展開が読めなかった”という映画「アイデンティティー」。
先が読めない驚愕のラストは、必ずや見る人を沈黙させます。
(ひっくり返る人もいるかも)
閉ざされた空間での物語なのに90分飽きさせない演出と脚本はお見事。
それもそのはず、脚本家のマイケル・クーニーは劇作家としても活躍。
(ワン・ロケーションはお手の物)
美術監督のマーク・フリードパークはモーテルとその周辺の大きなセットが組み立て、40日間雨を降らせ続けたそう。
映画「アイデンティティー」の画面から滲み出る独特の雰囲気はそのなせる業だろう。
タイトル「アイデンティティー」の意味も最後にわかるはず。
あまりの結末に怒る人もいる映画「アイデンティティー」
是非、御覧あれ。
変化球ミステリー映画「探偵クレア 白蘭の女」 [映画鑑賞]
「探偵クレア 白蘭の女」は2017年のアメリカ映画。
上映時間は82分。
この「探偵クレア 白蘭の女」は”一風変わった探偵物”に仕上がっていて、”ブライアン・デ・パルマ監督好き”なら強く勧める作品。
監督・脚本はスティーヴ・アンダーソン。
世界一有名な放送禁止用語“FUCK”を徹底研究し、アメリカにおける“言論の自由”に迫る2007年のドキュメンタリー映画「FUCK」の監督。
主演のクレアには東野圭吾の小説「秘密」のフランス版リメイク映画の「秘密 THE SECRET」(2007)、シルヴェスター・スタローン主演SF映画「ジャッジ・ドレッド」(1995)のリメイク2012年版でヒロインを演じたオリヴィア・サールビー。
(2012年、雑誌『Complex』で「ニューヨークで最も魅力的な50名の独身女性」第9位に選ばれている)
クレアに仕事の依頼をするビビアンに1983年のヒット映画「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールス。
クレアを見守る保安官役にジョン・キャロル・リンチ。
ジョン・キャロル・リンチはファーゴ(1996)、グラントリノ(2008)、シャッターアイランド(2010)などたくさんの映画に出演している銀幕の名脇役。
映画「探偵クレア 白蘭の女」のあらすじ
フリーの女探偵クレアはアメリカのカルフォルニア州サンルイスオビスで発生した“白蘭事件”の調査を郡の担当官ビビアンに依頼される。
被害者は女性で頭部や両腕の切断という無残な姿で発見された。
身元不明のその女性は事件の3カ月前、高級住宅の一軒家を借りたまま行方不明になった美しい女性“白蘭”らしい。
(屋敷の外から見えるところに見事な白蘭を飾り、たくさんの男性が入れ代わり立ち代わり家に出入りしていた)
しかし、身分証明書や写真は偽物で、彼女は何者なのか、誰に殺されたのか、何一つ分からぬまま迷宮入りとなっていた事件だった。
クレアは地元警察の保安官が「調べつくしたがないにもない」という被害女性の豪邸から調査を開始する。
高級な下着に様々なウィック、香水、大人の玩具などを目にしたクレアは、やがて屋敷から警察が見つけられなかった大金と謎の鍵を見つけ出すが…
ここから一部ネタばれあり。
クレアは屋敷で被害者の下着を身につけて、口紅を塗りウィッグをつける。
クレアは被害者の意識をなぞる、追跡する、遡る、
いわゆる”トレース”で調査をしてゆく。
普段は眼鏡をかけ、野暮ったいクレアが化粧をして変わってゆくシーンは息を飲む。
(クレアが段々、美しく、コケティッシュに変化してゆく様はまさに蛹から孵った蝶のよう。オリヴィア・サールビーの女優としての高いポテンシャルを感じる)
コンサートでの人物描写やホテルのバーでのシーンはデビッド・リンチを意識しているよう。
この映画、ミステリアスさは保証する。
クレアを信頼するビビアン役ジェニファー・ビールスもいい。
2008年から続くリーアム・ニーソン主演映画「96時間」の前日譚、若き日のブライアン・ミルズを描くスパイアクションドラマ「96時間ザ・シリーズ」でも秘密機関ODNI(アメリカ合衆国国家情報長官官房)のブライアンの上司役を熱演していた。
(残念ながら、2シーズンで打ち切り。アクションは良いけど、お話は単調)
アクションも出来て、演技も悪くない。美貌の衰えもないので、ジェニファー・ビールスはこれからも注目。
そして、ジョン・キャロル・リンチが登場すると画面が締まる。
(いい役者は画の収まりが良く、存在感がある。持って生まれたものか経験なのか?)
原作はサラ・グランの私立探偵クレア・デウィット・シリーズ。
探偵は壊れた街で 私立探偵クレア・デウィット・シリーズ (創元推理文庫)
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2015/06/22
- メディア: Kindle版
映画の終わり方がややミステリアスなのは続編を意識してか?
カメラワークや美術は素晴らしい。
謎解きより雰囲気を楽しむ作品。
オリヴィア・サールビーの変幻自在を楽しむべき。
オススメ。